観察研究のご説明


ユースケース・ベースのPHRサービスによる

Open FHIRと電子カルテの連携を目指す

クラウド型医療連携プラットフォーム構築研究


この説明文書は、あなたにこの研究の内容を正しく理解していただき、あなたの自由な意思に基づいて、この研究に参加するかどうかを判断していただくためのものです。

 この説明文書をお読みになり、担当医師からの説明を聞かれた後、十分に考えてからこの研究に参加するかどうかを決めてください。たとえ参加されなくても、今後の治療に不利益になることはありません。また、不明な点があれば、どんなことでも気軽に質問してください。

 

1.観察研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター、脳神経外科、内分泌代謝・糖尿病内科では、糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、脳卒中、COVID-19(病名)の患者さんを対象として、電子カルテのデータを用いて個人のスマートフォンアプリケーションであるPHRPersonal Health Records)サービスによるクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究に関する「観察研究」を行っています。

今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027331日までです。

 

2.研究の目的や意義について

 本研究は、電子カルテと個人のスマートフォンアプリケーションであるPHRの連携・相互運用性・データ保存性の確保・有効性・ユーザビリティの向上を目的としています。

 臨床上重要な疾患別ユースケースとして既存の生活習慣病標準PHR推奨セットに加え、COVID-19の標準ユースケース(Common Pass)や脳外科学会の脳卒中ユースケース等のアプリケーションを標準基盤OpenFHIRで構築する医療連携プラットフォームとPHRに実装します。疾患非特異ユースケースでは薬剤情報、診療情報提供書と退院時サマリを実装し、マイナポータルから特定健診情報を連携します。またPatient Engagement推進ユースケースとして患者さんの意思や患者さん自身の評価である患者報告アウトカムと動的同意取得機能を実装します。電子カルテと医療連携プラットフォーム(PHR基盤)の連携は、厚生労働省が推奨するHL7 FHIRで実装します。

 これは厚生労働省が20207月から推進している「データヘルス集中改革プラン」に準拠した先端事例となります。内閣府の経済財政政策の基本方針「新たな日常に対応した予防・健康づくり、重症化予防の推進」にも貢献します。医療連携プラットフォーム上のPHRデータベースに各種の標準的なユースケース項目を定義しHL7 FHIR連携を実装した上で、PHR事業者に開放することにより、全国のPHR事業者間で相互運用性が確保されます。また、利用者が契約するPHR事業者の変更時のデータ移行が円滑に行われ、PHR運用コストは大幅に削減され、健全な競争原理下でのPHR業界の発展が期待されると同時に利用者のデータ保存性が確保されます。

各ユースケース別に必要なデータ項目の臨床的な定義・構造化、標準化の推進により、各種臨床ガイドラインや同意取得などの社会ルールやエンタテイメント要素のPHR実装が可能となり、入力支援やIoT連携によって各項目のデータを補完することにより有効性が向上されます。さらに従来運用が進んでいない治療に対する患者さんの意思や患者さん自身の評価を収集する患者報告アウトカム機能や、新倫理指針が出た際や研究目的に応じた同意を取得する機能(動的同意機能)の導入によって、患者さんの主観的情報や同意を収集できます。これにより、患者主体医療やデータ2次利用が飛躍的に向上します。

 

3.研究の対象者について

研究許可日〜2027331日までに、九州大学病院または国際医療福祉大学成田病院・三田病院の脳神経外科に脳卒中で入院中、または退院後通院されている患者さん。同病院の内科で生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、慢性腎疾患)で通院されている患者さんで、研究対象者への適格基準を満たす方、150名を対象とさせていただく予定です(研究全体の対象者数:160名)。

 

4.研究の方法について

 この研究の参加に同意いただきましたら、電子カルテとマイナポータル、Common Pass(The Common Pass Project)から以下の情報を取得します。また患者さんが入力した健康情報、患者主観状況報告情報や問診情報についても取得いたします。取得した情報はセキュリティを考慮したTLS1.3のネットワークを用いてインターネット経由で、クラウド上(Amazon Web Services (AWS))の医療連携プラットフォームのPHRデータベースに連携し、格納されます。

 取得した情報の利用者アンケートについては、PHRアプリケーションの有用性と操作性の改善のために利用します。そのアンケート結果と検体検査結果情報とマイナポータルから連携した特定健診情報について統計解析による比較を行い、アプリケーションの利用者の特性を抽出します。

 〔取得する情報〕

属性(氏名、カナ氏名、性別、生年月日、年齢、郵便番号、都道府県、住所・建物(任意)、電話番号、メールアドレス)、病名、来院日、薬剤情報、検体検査結果情報、診療情報提供書、退院サマリ、マイナポータルから連携した特定健診情報、PHRアプリで収集する情報(身長、体重、血圧、血糖、脳卒中患者主観状況報告情報、脳卒中問診情報、動的同意情報)、COVID-19関連情報(PCR等検査証明、ワクチン接種証明書)、利用者のアンケート(アプリの使用や健康管理に関する主観的評価、患者コンプライアンス評価)

 

5.研究に関する利益と予測される負担や不利益について

 あなたがこの研究に参加することにより直接受ける利益はございません。また、予測される負担や不利益はアプリケーションインストールやデータ入力やアンケートの回答にかかる時間的負担です。

(以下、想定)

PHRアプリのインストール・10分/回、PHRアプリへの入力・アンケートの回答時間・10/

 

6.健康被害が発生した場合の対応について

この研究では、あなたに通常の治療に使用するお薬以外のお薬を使ったり、特別な医療機器による検査をしたりすることはありませんので、健康被害が発生することはないと考えられることから、特別な補償制度はありません。

 

7.経済的な負担や謝礼について

 あなたに通常の治療費以外に新たな負担を求めることはありません。

また、あなたに謝礼をお渡しすることもありません。

 

8.本研究への参加とその撤回について

この研究への参加はあなたの自由な意思で決めてください。同意されなくても、あなたの診断や治療に不利益になることは全くありません。

また、いったん同意した場合でも、あなたが不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができます。同意を撤回されたい方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

その場合は、取得した情報もそれ以降はこの研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時にすでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。

 

9.個人情報の取扱いについて

あなたのスマートフォンアプリケーションのPHRPersonal Health Records)では、あなたの情報と診療情報、健康情報が保管され閲覧できます。また、担当医療者や研究者があなたの情報を閲覧する際には、あなたの意思確認をPHR上で登録し、許可した場合のみアクセスできます。

また、あなたの診療情報、健康情報やアンケート回答結果をこの研究に使用する際には、あなたのお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。あなたと研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。

また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、あなたが特定できる情報を使用することはありません。

この研究によって取得した情報は、九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター・教授・中島 直樹の責任の下、厳重な管理を行います。

ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

 

あなたの診療情報、健康情報やアンケート回答結果を他機関へ送付する際には、九州大学にて上記のような処理をした後に行いますので、あなたを特定できる情報が外部に送られることはありません。

 

10.研究により得られた結果等の説明について

本研究は、あなたの健康状態等を評価するための情報を求めたり、あなたの健康等にとって重要な事実が偶然に判明する可能性があるものではないため、あなたやあなたのご家族への研究結果の説明は予定していませんのでご了承ください。

 

11.試料や情報の保管等について

〔情報について〕

この研究において得られたあなたの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学病院メディカル・インフォメーションセンターにおいて同分野教授・中島 直樹の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します

 

また、この研究で得られたあなたの情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、あなたの同意がいただけるならば、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えております。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

 

12.この研究の費用について

この研究に関する必要な費用は、厚生労働科学研究費補助金でまかなわれます。

 

13.利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。

 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。

 

本研究に関する必要な経費は厚生労働科学研究費補助金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

 

利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。

利益相反マネジメント委員会

(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092−642−5082)

 

14.研究に関する情報公開の方法について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、どうぞお申し出ください。

 また、この研究では、学会等への発表や論文の投稿により、研究成果の公表を行う予定です。

 

15.特許権等について

この研究の結果として、特許権等が生じる可能性がありますが、その権利は九州大学及び共同研究機関等に属し、あなたには属しません。また、その特許権等を元にして経済的利益が生じる可能性がありますが、これについてもあなたに権利はありません。

 

16.研究を中止する場合について

研究責任者の判断により、研究を中止しなければならない何らかの事情が発生した場合には、この研究を中止する場合があります。なお、研究中止後もこの研究に関するお問い合わせ等には誠意をもって対応します。

 

17.研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。

研究実施場所

九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター

九州大学病院脳神経外科

九州大学病院内分泌代謝・糖尿病内科

研究責任者

九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター 教授 中島 直樹

研究分担者

九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター 講師 山下 貴範

九州大学病院脳神経外科 助教 下川 能史

九州大学大学院薬学研究院臨床育薬学分野 准教授 島添髣Y

九州大学大学院薬学研究院臨床育薬学分野 講師 小林大介

九州大学大学院薬学研究院臨床育薬学分野 助教 川尻雄大

九州大学薬学部 学部生 立麻香帆

九州大学薬学部 学部生 猪阪日向子

九州大学薬学部 学部生 國武さくら

共同研究機関等

機関名 / 研究責任者の職・氏名

役割

国際医療福祉大学 医療情報部 教授 平松 達雄

情報の提供

 

18.相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局

(相談窓口)

担当者:九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター

 講師

 山下 貴範

連絡先:〔TEL092-642-5881(内線2050

    FAX092-642-5889

メールアドレス:yamashita.takanori.804@m.kyushu-u.ac.jp