教育Education

教育について

医学研究院医療情報学講座および大学病院メディカル・インフォメーションセンターでは、山積する様々な社会課題を解決するために、社会実装を重視した健康医療情報の研究を行っています。
社会における様々な事業で蓄積したデータのことをReal World Data(RWD)と呼び、実社会に即したビッグデータ解析やAI開発に用いうることが注目されています。我々は健康医療サービスで蓄積したRWDに着目して、診療支援や患者の自己管理支援を行うシステムの開発・実装や、新しい医学知識の発見、医学教育の支援をする基盤づくりと人材育成を目指しています。

そのために必要な人材や知識は多岐に渡ります。医療情報学講座とメディカル・インフォメーションセンターの教員は、システムエンジニア、データサイエンティスト、臨床疫学研究者、ELSI(倫理・法制度・情報セキュリティなど)研究者、グローバルヘルス研究者などから構成され、協働して研究や社会実装を進めています。

医療情報学講座の大学院では、医療者のみならず、他の分野からの研究者も歓迎します。超少子高齢社会や自然災害に苦しむ日本社会の改善を目指したり、途上国にヘルスケアシステムを普及するなど、夢を抱いた学生さんを歓迎します。学部生も興味があればぜひ遊びに来てください。

指導内容

医療情報学講座の大学院では、様々な専門性をもつ教員のもと、大学院生それぞれの希望を聞きながら研究テーマを設定します。各自の研究テーマに適したデータ解析基盤、研究デザイン、解析手法を選択し、実際に解析・考察することを通して、系統的な臨床研究のプロセスを身につけることができます。合わせて、健康医療RWDを活用するために必要なELSIについても指導していきます。

研究テーマ例

データの標準化がもたらす生活習慣病領域における診療情報の効率的な収集と利活用

本研究では6つの臨床学会と連携し、生活習慣病領域における診療情報の項目名、単位やデータ粒度等の標準化を進めている。また臨床試験データの交換標準であるCDISCとの連携により自己管理項目セットの国際標準化にも着手している。本研究によりデータの効率的な利活用だけでなく精緻な健康や疾病の自己管理が可能となることが期待される。

公的統計データを用いた健康格差の研究

公的統計調査データを活用して個人や地域の社会的属性と母子保健指標や死亡などの健康指標との関係を明らかにする研究を行っている。公的統計調査とは人口動態統計などの政府が行った調査のことであり、全国を代表する調査結果をもとに日本における健康格差をデータ解析により明らかにしている。

大規模医療Real World Dataで解明する時系列的診療実態 & Drug Repositioning

本邦31自治体の対象者320万人に関する保健医療統合データベース(LIFEstudy)を二次利用した、診療実態の時系列的パターンのクラスタリング(大規模保健医療データベースを用いた日本人集団におけるセレコキシブの癌および心筋梗塞発症との関連検討:2024年度科学研究助成事業基盤研究C採択研究)と、NSAIDsの適応外疾患における効果の因果推論を行う。(大規模保健医療データベースを用いた日本人集団におけるセレコキシブの癌および心筋梗塞発症との関連検討)

妊産婦の健診と分娩前後の母子健康傾向

病院データベースから妊産婦健診データと分娩時の記録を抽出し、テキストマイニングなどの処理の下、産前の健診データから出産時及び産後の母子の健康状態の予測モデルを作る。得られた結果は母子保健制度が十分整備されていない途上国等での母子健康管理の活動に応用し、効率的で有効な産前産後健診を構築する。

退職前後の高齢者の孤立・孤独と生活習慣:SNS利用との関係

少子高齢化のわが国では高齢者の自立と積極的な社会参加の促進において情報通信技術(ICT)の活用が期待される。ICTを利用した交流の増加により孤立や孤独が解消されると、健康管理をはじめとした生活意欲が高まり、就業やボランティア等の社会参加を促進・継続できると期待される。

就労女性の健康とワークエンゲージメント

女性就労者の約9割が健康問題のため、本来の力を発揮することができないパフォーマンス(PF)の下がった状態で就労し、ワークエンゲージメントが低下している可能性がある。個人の生活習慣から所属企業の女性従業員割合など、ミクロからメゾレベルにおける行動・環境要因とPF低下との関連を明らかにし、介入可能性を論じる(神奈川県立保健福祉大における研究)

漢方薬の多剤併用と有害事象

西洋薬では薬を多剤併用することで様々な害が起こるポリファーマシーが問題視されていますが、同じことが漢方薬でも起こっているのかどうかを検討しています。有害事象が起こった人だけでなく、有害事象が起こっていない人の情報も得ることができるという電子カルテデータの強みを活かして研究を進めています。

甲状腺細胞診画像の分類

深層学習の画像分類モデルを用いて約14万8千枚の細胞診画像を学習させ、7種類の甲状腺がんと良性病変を高い精度で分類した。図は各病変画像から得られた特徴量をt-SNEで二次元に圧縮した結果。隈病院病理診断科との共同研究。

冠動脈OCT画像の分類と予後予測

冠動脈OCT画像から欠陥の脆弱性を3クラス((a)Normal, (b)Stable, (c)Vulnerable)に分け、深層学習の画像分類モデルを用いて高い精度で分類した。図はGrad-CAMを用いてAIの注目箇所を可視化した結果((d) - (f))。赤い部分に注目しており、医師の見解と一致した。

SNS投稿によるメンタル不調の推定

「SNSの投稿内容によるメンタルヘルスの推定」は問診などのような質問票より早期にメンタル不調を検出できる可能性があります。SNSの投稿のキーワードの中で、どのキーワード(単語)がメンタル不調に起因しているのかについて調査し、機械学習によるメンタル不調のモデル構築に関する研究を進めています。

入学試験

医療情報学講座の大学院へ入学を希望される方

事前に下記問い合わせ先より研究テーマ等についてご相談ください。
希望される内容によっては、より適する他の研究室をご紹介する場合があります。

入学試験に関する情報

九州大学大学院医学研究院の公式情報( 九州大学大学院医学系学府 医学専攻・医科学専攻 入試案内 )をご参照ください。